今大会、ここまでの全イニングを投げ切っているエース中須が絶対的な存在。準決勝までの5試合で3つの完封、35イニングを投げ失点はわずかに3と抜群の安定感を誇っている。初戦から強豪チームとの対戦が続いたが、生命線である外角低めの速球をうまくコーナーにコントロールしここまで乗り切ってきた。多くの三振を奪ったその様は、強豪ピエロのエース時代に相手打者から恐れられた“豪腕中須”の復活を十分感じさせる。また、今大会の中須は打たせるところは打たせる、三振が欲しい場面ではきっちり三振を奪うなど場面に応じてうまい投球を見せており、相手にとって攻略は容易ではない。さらにCircusには速球派の石川、変幻自在の投球が魅力の岡本ら好投手が多く控えており層が厚い。
▲心身ともに成長し、エースとしてさらなる進化を遂げた中須


 今大会のCircusの攻撃の印象は淡白なバッティングはせず、とにかく手数を多く出すといった形が見られる。具体的には2死走者なしの場面でも、そこからの得点の可能性を信じ、どんな形でも毎回必ずランナーを塁上に送り込むという気迫がナイン全体から伝わってくる。3者凡退で簡単に終わるイニングを作らないことで、たとえ得点につながらなくても、攻めのリズムを常に保ち続けることで試合の流れを支配している。カギを握るのは2番の善財。初戦からここ一番に強い打撃で多くの勝利打点を挙げ、準決勝でも全打点を稼ぐ活躍を見せた。中軸を打つ4番・杉山は迫力十分のスラッガー。パンチ力のある5番・渡辺も気合十分の打撃で好機に滅法強い。1番を打つ田邉は出塁率の高い核弾頭だ。
▲上位から下位まで気の抜けない打者がズラリと並ぶ強力打線
(左から田邉、進士、武田)


 部員の大半がこれまでのアークカップでも活躍してきた岬クラブ・ピエロの出身。前チームがいずれも強豪で有名だったため、Circusは結成当初から「強い、強い」と周りからも言われ注目されてきた。そんな中で、「正直勝たなきゃいけないというプレッシャーもありました」と杉山監督も話すように、春までのCircusは相手チームというよりむしろ精神的な部分での自分たちとの戦いだったと言えるだろう。そんな中、今大会は過去の実績を一度忘れ、全員で一体感を持って臨んだ結果、初の優勝戦進出を果たした。さらにこの夏はただ勝っただけでなく、最激戦と言われたゾーンを横綱相撲で勝ち抜くなど、今大会漂わせる気力、充実度は参加チーム中でもナンバーワンと言えるだろう。
▲己との戦いに打ち克ち、ようやく辿り着いた舞台で必勝を誓う