昨年までは七村という絶対的なエースがほぼ一人で引っ張ってきた球嵐の投手陣だが、この春は少し様相が違う。むろん七村も健在だが、この春は速球派の澤出が台頭した。澤出は今大会のここまでの全試合で先発。1回戦は完封、2回戦は被安打2の1失点で完投勝利を挙げるなど抜群の安定感を見せた。澤出の魅力は威力のある直球。そこへ緩急2種類のスライダーを交え打者を圧倒してきた。昨年から投手に転向したばかりとは思えない落ち着きやマウンド度胸もあり、チームの東京ドーム進出に大きく貢献した。3回戦以降はこの澤出とエース七村との継投策が確立。3回戦では2人で強打のヤンキース打線を完封するなど互いに良い相乗効果をあげ激戦を勝ち上がってきた。東京ドームでも2人の継投が予想される。
▲マウンドを守るのは、速球派・澤出と絶対的エース七村の2枚看板


 派手さはないものの、小技や機動力を絡めた多彩な攻撃で畳み掛ける。自慢の堅守で流れを呼び込み攻撃につなげ、チームの最大の持ち味であるつなぐ意識を発揮して好機を確実に得点に結びつける。両チームで計23点の乱打戦となった準々決勝がその象徴。一見大味な得点の入り方に見えるが、しぶとく連打を集め最終的には好投手を擁する稲葉ベースボール倶楽部から13得点を挙げた。また、その試合で2番・中川が3ランを含む5打点と大爆発。続く準決勝では5番・曽根が逆転3ランを放つなど、好機で一発が出る場面もこの春は多く見られた。さらに、強い精神力が魅力の3番・山口、センターから逆方向への打球が印象的な不動の4番・竹村ら中軸も今大会好調で優勝戦でも活躍が期待される。
▲今季得点力を増したジグザグ打線の中核を担う山口、竹村、曽根


 球嵐はこれまで投手が好投はするものの打線の援護がなく、試合を落とすことが多かった。しかし今大会は、長年の課題でもあった得点力不足が解消され、一気に決勝戦までコマを進めた。その最大の要因はナインの意識改革。これまで真面目な性格の選手が多かったためか、慎重に組織野球を実践する傾向があった。しかし今年からは、「失敗しても構わない、純粋に野球を楽しもう」という考えがナインの間に浸透。結果、呪縛のようなものがなくなり得点力が上がるという好結果につながった。これまでの球嵐は昨年だけを見てみても春は2回戦、夏は初戦で敗退するなど、なかなか上位に進出できない時期が長く続いた。そんな苦難の時期を乗り越えてたどり着いた晴れ舞台。ひと回り大きくなった姿を東京ドームで披露したいところだ。
▲ナインの意識改革でひと回り大きくなった球嵐が一気の頂点を狙う