6月5日(日)  優勝戦 1 2 3 4 5 6 7
K.O.J.B (桐生市) 0 1 0 1 0 0 0 2
球 嵐 (習志野市) 2 0 0 0 4 0 × 6



優勝戦実況

 大会8日目の6月5日、決勝戦。開幕初日こそ東日本大震災の影響で順延となったが、以降は順調に日程を消化。優勝戦会場の東京ドームには、直前まで行われていたプロ野球セ・パ交流戦・巨人 対 日本ハムの1点を争う熱戦の余韻が残っているなか、この春の頂点を決める試合を見届けようとする観客が続々と集まってきた。


▲球嵐の先発は、今大会のエース格・澤出



▲K.O.J.Bは予想に反し先発に橋本を起用
 2年前、同じ東京ドームで惜しくも敗れて準優勝に終わったK.O.J.B。そのときは当時最強の名を欲しいままにしていた草野球界の王者・ピエロと互角以上の戦いを展開。王者を土俵際まで追い込みながら、本当に惜しい敗北を喫した。その後は大会でも序盤戦での敗退が続き、なかなか上位進出を果たせない日々が続いた。しかしこの春は、一度打ち出すと止まらない攻撃力、塁に出たら徹底的に相手バッテリーをかき回す走力など、2年前を彷彿させる気迫、執念の野球が復活。わずか2年で東京ドームに戻ってきた。

 一方、初の決勝進出となった球嵐。昨年まで七村という絶対的なエースが一人で引っ張ってきた印象が強いチームだったが、この春は速球派の澤出が台頭。今大会のここまで全試合で先発するなど、エース格としての役割を立派に果たしてきた。打線もこの春はナインの意識改革に着手。「純粋に野球を楽しもう」との考えがナインの間に浸透し、長年の悩みの種だった貧打の呪縛のようなものがなくなった。結果、各打者の打撃が飛躍的に向上。得点力不足が解消され、今回の決勝戦進出の大きな原動力となった。

 エース同士の投げ合いになるのか。はたまた乱打戦になるのか。どちらの展開になるかは予想もつかなかったが、見るものにとって幸運なことに、どちらもその姿を現した。

 1回の表、K.O.J.Bの攻撃は、先頭の好打者・奥野(毅)がライト前ヒットで出塁するというこれ以上ない形で試合に入った。しかしこの回は後続が続かず無得点に終わる。

 その裏の球嵐は、大方の予想に反しこの日先発してきたK.O.J.B・橋本にいきなり猛攻を仕掛ける。四球と盗塁で2死ながら2塁と先制のチャンスを作ると、迎えた4番・竹村がセンターの頭上を越える大きな3塁打を放ちまず1点を先取。さらに続く5番・曽根もレフト前に弾き返し2点目。いきなり2-0とし、球嵐がまず試合の主導権を握った。

 しかし追う形となったK.O.J.Bは直後にすぐ反撃する。2回1死から、6番の奥野(勝)がレフト線を破る2塁打で出塁すると、その後ワイルドピッチで3塁に進み2死3塁とすると、ここで迎えた8番・藤生がライトの頭上を越える2塁打を放ち、K.O.J.Bがすぐさま1点を返す。

 勢いづいたK.O.J.Bは4回にも反撃を見せる。1死から8番・藤生が四球で出塁すると2死後、1番の奥野(毅)が死球となり1・2塁とする。このチャンスに2番の阿久沢がセンターへ2塁打を放ち、2塁走者が生還。K.O.J.Bが2-2の同点に追いついた。しかしこの時、3塁を狙った1塁走者の奥野(毅)が球嵐のセンター・石橋の好返球の前に寸前でタッチアウト。このプレーが、後の両軍にとって大きなものとなった。

▲竹村、曽根の連打で球嵐が2点を先制


▲4回、阿久沢の一打でK.O.J.Bが同点に


▲石橋の好返球で、3塁寸前タッチアウト


▲5回、両者の明暗を分けたクロスプレー



▲曽根のこの日2本目のタイムリーで決勝点
 K.O.J.Bは続く5回にも2死2塁から、6番・奥野(勝)がこの日2本目となるセンター前のヒットを放ったが、2塁走者の清水が球嵐のセンター・石橋の好返球の前にまたしても本塁クロスプレーの末に間一髪タッチアウトとなり、惜しくも勝ち越し点を逃した。

 一方の球嵐は、1回途中からリリーフしたK.O.J.Bのエース・久保田の前に打線が沈黙していたが、センター石橋の2度目の封殺が決まった直後の5回裏に一気の猛攻で畳み掛ける。1死から3番・山口が左中間への2塁打で出塁。続く4番・竹村が四球を選び1・2塁とチャンスを広げる。ここで迎えた5番・曽根がボールカウント2ボール-1ストライクからの4球目を鮮やかにライトに弾き返し2塁走者の山口がホームイン。球嵐が待望の勝ち越し点を挙げた。さらに球嵐はその後2死ながら1・2塁の形を残すと、ここで迎えた7番・長谷川がセンターの頭上を襲う2塁打を放ち、塁上の2者が相次いでホームイン。5-2と大きな2点を追加した。さらに球嵐は続く8番・平井の内野ゴロが悪送球を誘い、この間に2塁走者の長谷川が本塁にかえり4点目。6-2と大きくリードを奪った。

 結局、この回の猛攻が試合の行方を決定的なものとした。K.O.J.Bはその後、死球の走者を一人出した以外は球嵐の澤出にきっちり抑えられ万事休す。最後の打者を三振に仕留めた直後、東京ドームのマウンド付近では長年の夢だったアークカップ初制覇を果たした球嵐ナインの歓喜の抱擁や雄叫びがいつまでも続いていた。

 この試合スコアは6-2。球嵐6安打、K.O.J.Bはそれを上回る8安打を放ちながらも相手の好守の前に涙をのんだ。今大会は準決勝まで軟式野球では珍しい打撃戦となる試合が目についたが、決勝戦でもその流れは変わらなかった。「最後まで苦しかった。けど仲間に支えられて優勝することが出来ました」と満面の笑みを浮かべた澤出。一方でK.O.J.Bナインは敗戦直後こそはさすがに悔しさをにじませる選手が多かったが、閉会式が始まるころには一様に清々しい表情だった。

 球嵐は念願の初優勝。これまで投手が好投はするが打線の援護がなく試合を落とすパターンが続いてきた。昨年は春2回戦、夏は初戦で敗退するなどなかなか上位に進出できない時期も長く続いた。そんな苦難の時期を乗り越えてようやくつかんだ山の頂。本当にうれしい歓喜のフィナーレだった。一方でK.O.J.Bは、またしてもあと一歩のところで優勝を逃した。しかし2年前の悔しさを晴らさんとばかり勇敢に挑んだ今大会は、一段と迫力を増した打線にエースの久保田の粘り強い投球がかみ合った実に見事な戦いぶりだった。

▲勝利の瞬間、マウンドへ駆け寄るナイン



▲歓喜の初優勝を決め、佐藤監督を胴上げ



▲またしてもあと一歩でVを逃したK.O.J.B

 閉会式も終わり、静かになったグラウンドでは、両チームが各々記念撮影。このとき誰もが笑顔なのが印象的だった。