6月7日（日） 　優勝戦	1	2	3	4	5	6	7	8	計
ピエロ　（世田谷区）	0	0	0	0	0	0	0	1	1
Ｋ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐 （桐生市）	0	0	0	0	0	0	0	0	0

※大会規定により、８回は１死満塁のサドンデスを実施

優勝戦実況

記念大会の覇者をめぐるファイナルラウンドは、３度目の優勝を狙う強豪・ピエロと群馬県勢初の頂点を目指すＫ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐による、１点を争う白熱した投手戦となった。 ▲嵐の先発は、今大会急成長の久保田 ▲ピエロの先発は、速球派右腕の安井 　過去２回の優勝戦を経験している王者・ピエロは今年も堂々の戦いぶりで大舞台に戻ってきた。ナインからは「ピエロの野球をするだけです」、「変に力まずに試合に臨めばいいのでは」と試合前にコメント。一方のＫ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐。この春がアークカップ初出場でまずは１勝を目標にしていたチームが、あれよあれよという間に決勝まで進出。カギを握るのはエースの離脱というピンチを獅子奮迅の活躍でチームを救ってきた投手の久保田。投打に大車輪の活躍でチームをここまで引っ張ってきた原動力であることは誰もが認めるところ。「相手は強豪ですが攻めの気持ちを忘れずに投げたいです」と言う久保田。そして、他のナインも「東京ドームという大舞台でも飲まれることなく、強気な野球をしたい」と平常心の気持ちを強調する選手が何人もいた。投打ともども、真っ向からピエロにぶつかっていく最高の精神状態だった。 　この対称的なカラーの両チームによる優勝戦は果たしてどんな展開になるのか。何が勝敗を分けるのか。予断を許さない期待感とともに、平成21年6月７日、大一番は幕を開けた。 　この試合、Ｋ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐の先発は今大会急成長を見せた久保田、ピエロの先発は大方の予想とは異なり速球派・安井の両右腕の投げ合いで始まった。

最初にチャンスを迎えたのはピエロ。２回、１死から５番・橋口がレフト前に弾き返しこの試合最初の走者を出す。しかしここで一気に畳み掛けたかったピエロだが、続く６番の浅海がサードゴロの併殺に倒れチャンスを潰す。一方のＫ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐の反撃は４回。ここまで一人の走者も出せなかったが、２回から先発の安井から変わったピエロの２番手・中須を攻め、先頭のポイントゲッター・１番奥野（毅）がライトへライナー性のクリーンヒットを放ち出塁。無死１塁となりここから様々な攻撃が予想された。しかしここで１塁走者の奥野（毅）が微妙なタイミングながら中須投手のけん制で間一髪アウト。惜しい先制の好機を逃した。 ▲嵐の鉄壁の守備が王者の攻撃を封じる

▲エンドランを外され、ピエロ痛恨の無得点 　ピンチを逃れたピエロは直後の５回に先取点の好機を作る。この回先頭の代打・杉山がまずセンター前ヒットで出塁する。１死後、６番浅海が四球を選び１・２塁としたあと、７番の代打・廣島がレフト前ヒットで続き、１死満塁とこの試合最大のチャンスを迎える。ここでピエロが取った作戦はエンドラン。８番の代打・寺山の２球目に３塁走者がスタート。しかしこれをＫ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐バッテリーが見事に外し空振り。３塁走者の杉山が三本間に挟まれタッチアウト。寺山もショートゴロに倒れ、ピエロは先制の大きなチャンスを逃した。その後は両チームとも走者こそ出すもののなかなかスコアリングポジションに進めることが出来ず０行進が続く。 　結局、試合は最終回を終了して双方無得点。大会規定により１死満塁から始まるサドンデスルールによる延長戦に突入した。

８回の表、先行のピエロは５番・橋口から始まる打順を選択。この作戦がピタリとはまり、橋口は初球をセンター前に弾き返す。まず３塁走者・黒坂がかえり、続いて２塁走者の武田も本塁を突いたが、ここはＫ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐のセンター奥野（毅）の気迫のバックホームの前に本塁寸前でタッチアウト。続く６番・浅海もサードゴロに倒れ、ピエロの攻撃は１点に終わる。 　その裏、Ｋ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐は４番・大鷲から始まる打順を選択。大鷲はカウント２-２からの５球目をフルスイング。打球は右中間にフラフラと上がった面白い当たり。センター、セカンドが追いつけず一瞬サヨナラかとも思われたが、ここはピエロのライト黒坂がダイビングキャッチを試み間一髪で好捕。３塁走者も本塁を突けず２死満塁と場面が変わる。後がないＫ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐は続く５番・清水がカウント２-１からの４球目を強振。これが三塁前に転がる面白いボテボテの当たり。１塁は際どいタイミングとなったが、判定はアウトとなりゲームセット。 　ピエロが１点を争う熱戦に終止符を打った。 ▲橋口の一打でようやくピエロが均衡を破る ▲ゲームセットの瞬間、歓喜のガッツポーズ

▲ナインが駆け寄り一瞬で歓喜の輪が出来た ▲嵐も初出場とは思えぬ堂々の戦いを演じた 　この優勝戦は結果的には王者・ピエロに軍配が上がった。積極的で迫力満点の攻守に安定感のある投手陣など随所に総合力の高さを見せた。20回の節目を迎えたアークカップに、史上２位となる３度目のＶという新たな歴史を刻んだ。ラストイヤーを掲げて臨んだこの春にまた一つ勲章がチームに加わった。 　一方でこの王者に一歩も引かない堂々の戦いぶりで、この日の主役といってもいい健闘を見せてくれたのがＫ.Ｏ.Ｊ.Ｂ嵐。群馬県勢では、夏の大会を含めて初のファイナル。一戦一戦、強くなっていった、まさにトーナメントを勝ち上がる典型的なチームで、今大会のエース格・久保田を中心によくまとまっていた。試合も大方の予想を覆す見事な戦いぶりを見せ、むしろ中盤以降は押し気味に進めていた。田米開監督も話すように、ナインは東京ドームの雰囲気に飲まれることなく、伸び伸びと自分たちの野球を発揮していた。敗れはしたが、今大会を沸かせたその戦いぶりは、称賛に値するものだった。とにかくナインは精いっぱい戦った。 　試合後、ピエロ・平野監督に３度目となるアークカップが贈られ、両チームが力の限り戦った東京ドーム決戦の幕が閉じた。