〜第17回大会HERO列伝〜

参加総数256チームを数えた第17回大会

今大会も個性溢れる猛者たちが、その頂点目指しグランドに輝いた。

熱闘の12日間・・・・

大会を沸かせたヒーローたちを追ってみた。

 V2を決めた優勝戦。最初にこだわったのはストレートだ。試合開始直後の初回、電光掲示板のスピードガンが140`を表示すると、マリンスタジアムが大きくどよめいた。「マリンで140`を出せて嬉しかったです。とりあえず140`を出せたので、その後は打たせて取る投球を心がけました」 一度大台を達成すると、ついつい次もと思うものだが、そこは気持ちを切り替え残りのイニングを冷静に投げ切った。昨年春の優勝投手でもある中須はその実力はすでに証明されていたが、この秋はさらに一回り成長した姿を見せてくれた。以前はその球速から、打者全員に対して三振を狙った投球が目立ったが、今大会は無理に三振を狙わず打たせて取る投球に切り替えた。「常に三振を目指す投手」から「要所で三振を奪う投手」に変貌した。その結果、この優勝戦でもそうだったが、ピンチでもまるで動じるところがなく、かえって三振を奪える投手になった印象だ。今やピエロの大エースに成長した中須の存在抜きに、V2の偉業はあり得なかった。「今回も最後にこのような舞台に来れてうれしい」と、笑顔でマリンスタジアムをあとにした中須。心身ともに成長したエースの次なる進歩が見ものだ。


 2度目の優勝を果たしたピエロにあって、勝利の陰にはいつも浅海がいた。例えば準々決勝のDANTE戦。0-0の緊迫とした投手戦で迎えた終盤の6回、2死無走者から粘りに粘って四球を選び、その後の決勝打を呼び込んだ。「追い込まれると何とかしようという気持ちが強くなります」 頂点を決めた優勝戦でも貴重な仕事をやってのけた。2点リードされて迎えた9回、1死満塁の好機で打席に立った浅海は、カウント0-2からの3球目のストレートをジャストミート。捕らえた打球はぐんぐんと伸び、広い千葉マリンスタジアムのスタンド中段に突き刺さる大きな打球をかっ飛ばした。しかし結果はわずかにファールとなったが、相手に与えた威圧感、プレッシャーは十分だった。さらに浅海の素晴らしさは、その直後にも見られた。大抵、大ファールのあとは力んで空振り三振となることが多いが、浅海はその後の際どいボールを冷静に見極め、押し出しの四球を選び、逆転サヨナラ勝利に結びつけた。「あそこは自分で決めようとは思わず、とにかく次につなげることを考えていました」無類の勝負強さと冷静さを発揮した浅海ならではの会心のプレーだった。


 CHIGAUZOの左腕エース・春日。2年前の準優勝投手で、いまや誰もが知るCHIGAUZOの絶対的な大黒柱だ。近年は迫り来る齢波に常に引退と背中合わせだったが、この秋は長年悩まされていた肩痛を癒すことに成功するなど体調維持に努めた。その結果、腕が思いっきり振れるようになりストレートの威力が増した。また、体重も3s落とし動きが軽くなるなど、まさに心身ともに絶好調の状態で今大会を迎えた。こうなれば百戦錬磨のベテランの投球が冴え渡る。毎試合、抜群の制球力で打者を簡単に料理。すべての試合を一人で投げ抜き、チームを2年ぶりの準優勝に導いた。「自分には速い球も切れの鋭い変化球もないので、コントロールで打たせて取りたい。コースに投げていれば、いい当たりをされても野手の正面に行きますから」 最後は逆転サヨナラ打を浴び、またしても準優勝に終わったが、「支えてくれたチームのみんながいたからここまで来れた。満足です。悔いはありません」 好リードが光った捕手・三鴨の言葉。「苦しかっただろうに、本当に底知れぬ力がある。凄いとしか言いようがない」 粘投を支えた捕手はしみじみ語っていた。


 「突破口は俺が開いてみせる」 彼のプレーがそう言っている。1死満塁から始める延長サドンデスでの再三にわたる快打は、味方打線に大きな勇気を与えた。その結果、周囲はいつしか彼のことを「ミスターサドンデス」と呼ぶようになった。そのミスターサドンデスの最初の活躍は3回戦の古豪・和名ヶ谷フレンズとの一戦。相手のマウンドには、これまた実績十分の優勝左腕・藤森が上がっていた。試合は大方の予想通り緊迫とした投手戦となり、双方無得点のままサドンデスルールによる延長戦に突入した。そして1死満塁の場面に起用された宮崎は藤森の2球目の直球をジャストミート。レフト前に鮮やかなタイムリーを放ち、待望の決勝点を挙げた。2度目の活躍は同じパターンで迎えた準々決勝の松江ギャランツ戦。今度も延長8回の1死満塁の場面で、またまた三遊間にタイムリー内野安打を放つなど、常に1点を争う緊迫とした場面で起用され、貴重な決勝点を叩き出し続けてきた。「いつもこのようないい場面で起用してもらい意気に感じます。何とか叩きつけてゴロを転がすことだけを考えて打席に向かうようにしています」 この男の登場に今大会は何度沸いたことか。


 豪快に振り切る高橋のバットスイング。空振りも実に絵になる。「フルスイングでいかないと相手のペースになってしまうので」 衝撃の一打が出たのは、5回戦のヤンキース戦。0-0で迎えた最終回の7回裏、2死3塁という一打サヨナラの場面で代打として登場。目の前には数々の修羅場をくぐってきた歴戦の兵・ヤンキースのエース・土屋がそびえ立っている。並みの選手なら、たとえチャンスでも萎縮してしまう場面だ。しかし高橋はしぶとく土屋に食らいつき、いきなり初球をライト前に持っていった。「あの打席は無我夢中でした。今までの野球人生の中でも一番の見せ場だったかもしれません。とにかく好投手から1本打てて嬉しいです」


 グリーンホーンズが初出場でいきなりベスト4入りできたのは、木村の好投があったからだ。随所に安打を浴びる場面もあったが、表情を変えず黙々と投げ込み要所を締めた。「毎試合、とにかく先取点だけは与えないよう気をつけて投げるようにしていました。アークカップに出てくる有名なチームと何試合も出来て、本当に楽しかったです」と振り返る。優勝戦進出を賭けたCHOTTO CHIGAUZO戦で力尽きたが、試合後に涙はなかった。「さほど身長があるわけではないのによく頑張ってくれました。アークカップの強豪たちを向こうに回して本当によく投げてくれました。自慢の投手です」と白石GMは微笑んだ。


 一発長打もある強打のスラッガー。チーム一の信頼で、ここぞという場面では彼しかいないとみんなが認める強いキャプテンシーを放ち、個性派集団を束ねた。  チーム初となる8強進出の立役者。切れの良い真っ直ぐと変化球、とくに打者の膝元に落とすスライダーが最大の武器。内外のコーナーへと投げ分ける抜群の制球力も光った。

 今大会では、ここ最近ではあまり見られなかった大会序盤戦からのマウンドでチームを鼓舞。ストレートに、切れ味鋭い変化球は相変わらず抜群だった。  がっちりとした体格、エースで4番のビコークラブの大黒柱。その堂々たる風格で、「威圧感がある」、「迫力が違う」と相手打者を畏怖した。

 ゆったりとした投球フォームから快速球を繰り出す。なかでも3回戦で上位進出の常連・TOOLSから奪った13奪三振の投球は圧巻だった。  過去の大会ではやや消化不良の投球が続いていたが、今大会は2回戦で春の覇者・TNCを下すなど、これまでの鬱憤を晴らすかのような快投を見せた。

 長身から投げ下ろす直球と緩急が武器。打者にとっては打ちにくい角度からボールが来る。新進気鋭・稲葉ベースボール倶楽部の自慢のエース。  豪快な奪三振ショーで大会の序盤戦を沸かせた。3回戦敗退とはいえ、今大会の快投で、「速球王」の称号がより強固なものとなった。