〜第16回大会HERO列伝〜

参加総数256チームを数えた第16回大会

今大会も個性溢れる猛者たちが、その頂点目指しグランドに輝いた。

熱闘の9日間・・・・

大会を沸かせたヒーローたちを追ってみた。

 背番号「7」がアークカップのマウンドで躍動した。今大会、注目の左腕エース・福田が不在というチームの緊急事態に代わって井上が初戦からマウンドに上がり続けた。「最初、今大会軸で行くといわれたときは緊張しましたが、やるしかないと思い覚悟を決めました」しかし、その言葉がにわかには信じがたいほど、毎試合のように冷静なピッチングを披露した。変化球を低めに集め、打者を翻弄。また、時折見せる巧みな牽制でピンチの芽をつむこともあった。本職はむろん内野手で「野手のほうが楽しい」と言う。実際、毎試合のように安打を放つなど打撃センスにも光るものがあった。「次回の大会では投げるかどうかはわかりません。言われれば行きますが(笑)」 夏には再びマウンドに上がるのか。それとも内野手に専念か。どちらにしても優勝投手の動向に楽しみが尽きない。


 レフトがバックホームを狙った送球が土屋の頭上を大きく越えていく。その瞬間、2人の走者が本塁を駆け抜け、TNCスパークスの劇的な初優勝が決まった。ゲームセットの時をベースカバーに入った自軍の3塁のベンチ前で迎えた土屋は、苦笑いを浮かべ、空を見上げた。しばらくその場を動くことが出来ず、TNCスパークスの歓喜の抱擁をいつまでもじっと見つめていた。「優勝したかったです。それだけを目標にやってきましたから。最終回は先頭打者に追い込んでから死球を与えてしまったのが痛かったです。あれで相手にまだいけるという雰囲気を与えてしまいました。みんなに申し訳ないです」 敗戦の責任を一身に背負い、エースは東京ドームを後にした。夏には、あと一歩のところで逃がした頂点を目指して、再びアークカップを揺るがす活躍を見せるつもりだ。


 虎見は長く強豪・TOOLSの主将としてチームを引っ張っている。昨年は優勝戦進出を果たし悲願の東京ドームの土も踏んだ。この春も初戦から毎試合のように安打を放つなどそのバットが火を噴いた。185aを越える長身の虎見は打席ではひときわ大きく見える。その存在感には、ナインが「オーラが違う」と言うのも分かる。そんな主将も最後は悔しい思いで今大会を締めくくった。2年連続ドームまであと1勝と迫った準決勝。1点を追う最終回、2死1・3塁の一打出れば同点の場面で虎見に打席がまわってきた。しかし結果は無念のサードゴロ。「あそこは、打たないといけない場面でした。せっかくみんなが自分までまわしてくれたのに申し訳ないです」 1塁に頭から突っ込み、ゲームセット。そのまま地を叩いた拳が、強い責任感を物語っていた。


 春夏通じて2回目の出場で一気にベスト4まで駆け上がったジェニオン。その躍進はエース高松の力投から始まった。「今大会は自分の理想のボールが投げられました」と話す高松のその言葉通り、気迫溢れる投球で打者を圧倒。あまり表情を変えずひたむきに投げるその姿はまさに「黙々と投げる鉄腕」と呼ぶにふさわしい。高松の好投に打線が呼応してチームは快進撃を続けた。しかし夢の東京ドームまであと1勝と迫った準決勝で力尽きた。「立ち上がりにカウントを悪くしてしまい先頭打者を出してしまいました。あれが痛かったです。試合を通じて要所で辛抱をすることが出来ませんでした。それにしても勝ちたかったです。みんなと東京ドームに行きたかったですね」 最後はちょっぴり悔しさを残しながら、初戦からすべて投げ切ったエースの春は終わった。