第15回記念アークカップ関東草野球選手権大会 優勝戦 in 西武ドーム
午後12時28分 試合開始

11月19日(日)  優勝戦 1 2 3 4 5 6 7
佐川急便千葉 (船橋市) 0 0 0 7 0 0 0 7
TNCスパークス (荒川区) 0 1 0 0 0 0 0 1



優勝戦実況


▲第15回大会優勝戦の火ぶた切られる
 参加256チームが、アークカップの頂点を目指して戦った2006年の秋。15回の記念大会となった今回の優勝戦の晴れ舞台に残った2チームは、ともに投打とも充実した、まさに決勝戦にふさわしいチームが勝ち残った。一方は、昨年に引き続き秋の連覇を目指す王者・佐川急便千葉。もう一方は、今大会屈指の左腕・福田を擁するTNCスパークス。それぞれのここまでの戦いぶりを見れば、そんな色分けが出来る。だが、ここぞというときの勝負強さ、劣勢の展開でも最後まであきらめない精神力、チームワークと、決勝に勝ち上がるまでの戦いぶりはどちらにも安定感があり、甲乙つけがたい。果たしてこの優勝戦はどんな展開になるのか、何が勝敗を分けるのか。予断を許さない期待感とともに、平成18年11月19日、午後12時28分、大一番は幕を開けた。


この試合の先発は、佐川急便千葉が今季急成長を見せた右腕の清藤、TNCスパークスは左腕の福田。大方の予想通り、両エースの先発で試合は始まった。


▲佐川千葉の先発は、背番号18の清藤

▲TNCの先発は、大会屈指の左腕・福田


▲2回、永森の鮮やかな一打でTNCが先制
 先攻の佐川急便千葉は1回表、2番の芳中が死球で出塁しワイルドピッチで2塁へ進めるが後続が続かず無得点に終わる。両エースがまずまずの立ち上がりを見せた序盤戦。そのため投手戦がしばらく続くとも思われた試合だったが、急遽先取点が入る。TNCスパークスは2回、この回先頭の4番・貞がライト前ヒットで出塁。その後、送りバントと内野ゴロの間に2死ながら走者を3塁に進めると、ここで迎えた7番・永森が初球を右中間へきれいなライナーで運ぶヒットを放ち、TNCスパークスが幸先よく1点を先制した。

 直後の3回は両軍3者凡退であっさりと終了したため、このまま試合はロースコアで展開される雰囲気も漂い始めた。しかし迎えた4回、試合は意外な方向へと急展開する。

  佐川急便千葉は4回表、先頭の2番・芳中がまず四球で出塁。続く3番・増田のときエンドランを慣行。しかしこれはTNCバッテリーがうまくかわし、増田は三振。しかし1塁走者の芳中は2塁盗塁には成功し、1死2塁と一打同点のチャンスをつかむ。ここで迎えたのが4番の和多田。今大会は序盤戦こそは本塁打も出たが中盤戦以降はブレーキとなるなどまさかの大不振。前の打席でもタイミングを外された内野フライに打ち取られるなど、悩める主砲に絶好のチャンスで打席が回ってきた。ここで和多田はカウントワンスリーからの5球目、福田が投げた渾身のストレートをジャストミート。打球はものすごい勢いで左中間に飛び、そのまま痛烈にワンバウンドしてレフトフェンスを越えた。結局エンタイトル2塁打となり2塁走者がホームイン。佐川急便千葉が1-1の同点に追いついた。

 この主砲の強烈な一打はただの同点打に終わらず、今大会を沸かせてきた屈指の左腕・福田の投球リズムを大きく狂わせる、値千金の一打となった。続く5番・大澤はフルカウントから四球を選び、さらに6番・片岡はセンター前にヒットを放ち1死満塁と佐川急便千葉は一打逆転のチャンスを広げる。ここで迎えた7番・辻はカウントワンスリーからよく見て押し出しの四球を選び、佐川急便千葉が2-1と1点を勝ち越す。押せ押せの佐川急便千葉はその後、次の打者8番・光賓の時、TNCスパークス・福田投手の暴投の間にもう1点を追加。さらに光賓が四球、9番の高城もフルカウントからこれまた死球となり、またまた押し出しでさらに1点を加え、計4-1とじわじわとリードを広げる。ここでTNCスパークスはたまらず先発の福田をあきらめ、2番手の小林をマウンドに送るが、佐川急便千葉はその後もさらに攻撃の手を緩めず、まずワイルドピッチで労せずして1点を追加。さらに続く1番・伊藤のとき伝家の宝刀エンドランを慣行。これが見事に決まり、6-1と大きくリードを広げた。その後、2番・芳中の死球で1・3塁とすると、続く3番・増田が放った当たりは平凡なピッチャーフライ。長かった佐川千葉の攻撃もようやく終了かと思われたが、しかしこれを小林がまさかの落球。3塁走者がホームインし、結局この回、佐川急便千葉が大量7点を奪い、まだ4回ながら試合の主導権を大きく握った。

▲主砲・和多田の痛烈な一撃が流れを変える


▲同点に追いつき、沸く佐川千葉ベンチ


▲押し出し四死球などで点差が広がっていく


▲エースのまさかの乱調でこの回一挙7失点

 その後は両軍走者を出すものの決め手を欠き0行進が続く。迎えた最終回、TNCスパークスは2死から8番・小平が意地のスリーベースを放つが後続が続かず、結局試合は7-1で佐川急便千葉がTNCスパークスを下し、2年連続、大会史上最多となる4度目の優勝を決めた。

 試合後の閉会式で佐川急便千葉の土井監督にアークカップが贈られ、256チームの参加で始まった第15回の記念大会の熱戦の幕が下ろされた。優勝した佐川急便千葉は昨年に引き続き、前人未到となる4度目の優勝を果たすなど、まさに向かうところ敵なしの「黄金時代」がまだまだ続いていることを強く印象づけた。いまや勝つのは当たり前と思われる王者・佐川急便千葉だが、250チーム以上が集まるトーナメントで毎回頂点に立つことはそうそうと出来るものではない。野球とは今やプロのチームがアマチュアチームに負け、時にいい打球が正面を突き、不運なプレーで力が上のチームであっても勝ち星を落とす場合も多い。今大会もそんな強豪チームが数多いる中で、「負けない」「勝ち続ける」ことは、もはやただ強いからだけでは片付けられないだろう。やはりこれは土井監督をはじめ、選手全員の精神力の高さの、日ごろの努力の賜物であることは間違いない。
▲もはや貫禄のV  土井監督、4度目の舞


▲惜しくも準Vに終わったTNCスパークス
 また、一方で惜しくも敗れたTNCスパークスは、大会屈指の左腕・福田の好投と勝負強い打撃で決勝戦まで勝ち進んできた。優勝戦も今大会の戦いぶりを比較して佐川急便千葉と互角かそれ以上の戦力と戦前は予想されていた。しかしふたを開けてみるとここまでわずか1点しか取られていなかったエース・福田がまさかの大乱調。一挙に7点を奪われた4回はエアポケットに入った状態で、後で振り返ってみると、「一体何が起きたかわからない」と言ったそんな状態ではなかったかと考えられる。まさに野球の怖さを思い知ったそんな試合内容であった。しかし投打ともに完成度が高く、「もしかしたら絶対的な王者・佐川急便千葉が負けるかもしれない」とも予想させたその実力、潜在能力は優勝しても決しておかしくないだけの素晴らしいものがあったことを最後に付け加えておく。